5.日本文明・日本文化の特徴、伝統的精神文化の継承と「文明の坩堝(るつぼ)」日本


(欧米の動向を視野に入れつつ、欧米のウイークポイントを認識しつつ、日本自身を振り返ろう。)

(1)日本文明史の概略
[日本文明は従来考えられていたよりもはるかに古いことが最近明らかになりつつあります。]

戦前の神話に基づく歴史も、戦後の社会科学に基づく歴史も、ともに誤っていたのではないでしょうか。階級史観により、日本の国体を色メガネでみることに無理があるとおもいます。
最新の考古学の研究成果や偽書といわれる古史古伝を含めて、太古の日本の真実を再研究するべきだと考えます。
明治以後の日本の歴史についても、東洋文明と西洋文明を融合し、文明開化、殖産興業、富国強兵を図り、欧米列強の東洋侵略から日本の独立を維持し、アシアを開放した点は評価すべきです。
ただし、昭和に入り、国際情勢の把握や国際戦略なしに、欧米の策略にはまったこともあり、周辺諸国を巻き込んだ戦争に突入し、周辺諸国に迷惑をかけたことも事実です。
そのような時代において、戦争末期、特攻隊として死んだ若者は純粋に国を守り、アジアの共栄を考えていたのです。
日本とアジアの関係が賠償や援助という経済関係中心から、もっと幅広いものとなり、世界の歴史の中で日本がやってきたことを、ていねいに説明すれば、理解をえられるのではないでしょうか。

(2)日本文明、日本文化の特徴
[「伝統的精神文化の継承」と「文明の坩堝(るつぼ)」日本」]

日本は有史以来、中国、インド、さらにはシルクロードを経由して西域までの世界のあらゆる文明を吸収した「文明の坩堝(るつぼ)」です。
明治以前は中国を経由して世界の文明を吸収し、明治以後は欧米を経由して世界の文明を吸収しました。
日本は世界の主要な文明を吸収しても、古来からの伝統的精神文化は、現代まで脈々と受け継がれています。古神道(こしんとう)こそ日本精神文化の源流です。
その後、仏教、儒教が伝来し、神道・仏教・儒教という東洋精神文化の主流が日本において受け継がれています。とくに仏教は日本で花開いたと言っても過言ではありません。日本の宗教者が仏教を発展させたのです。
以上のように、日本は世界のあらゆる文明を吸収した「文明の坩堝」でありながら、日本・東洋の伝統的精神文化、いわば、「日本の叡智、東洋の叡智」を受け継いでいるのです。

(3)現代日本文明と21世紀の展望
[西洋文明と東洋文明、精神文明と物質文明が融合したのが現代日本文明です。]

西洋文明と東洋文明が邂逅(出会い)し、精神文明と物質文明が融合したのが現代日本文明です。
日本人は明治維新以来の近代化、戦後の高度成長の時代に「プロジェクトX」にみられるような科学技術開発を行い、欧米に追いつけ、追い越せと懸命な努力をしました。
1990年ごろのバブルの時代に一時的に追いついたかにみえましたが、軍事力、政治力、経済力、科学技術力など多くの面で、欧米諸国や国際資本にはまだまだかないません。
20世紀末から21世紀にかけてのグローバリズムの進展のなかで、大部分に日本人は変化の潮流が認識できず、戦後体制の思考から脱皮できず、対応が遅れてしまいました。
1990年代は「失われた十年」といわれており、アメリカや国際資本の言いなりになった結果、日本経済は相当な痛手をおい、政治的にも未来の展望を日本人自身が描けない状況です。
しかし、わずか10年ぐらいの失政ですので、かなり厳しいものの挽回のチャンスはまだあります。日本の物づくりの技術と精神文化はまだ失われておりません。
全世界がアメリカ社会・アメリカ文明のようになるのか、アメリカの文明や社会に欠陥はないのか、日本の伝統文化を失ってよいのか、日本人として考えなければなりません。
日本としては、日米同盟を堅持し、欧米諸国や新興のアジア諸国と協調しつつ、グローバリズムの進展に対応するだけでなく、新世界秩序の構築に協力していくべきです。
一方において、日本の叡智、東洋の叡智を甦らせて、物質文明と精神文明の調和を図り、また西欧文明だけでなく多様な文明の相互理解を図る、つまり西洋文明と東洋文明の融合を図ることが、欧米以外の国々から日本に求められていることだと思います。
吸収した諸文明を日本という坩堝に入れて溶解し、再形成することにより、21世紀の地球文明・人類文明の創造に貢献しましょう。
日本は脱工業化社会ではなく、超工業化社会を構築し、ユビキタス社会の実現は目前です。ハードだけでなくソフトの提供もできるのです。科学技術を人間の生活のために利用するのです。
日本は吸収した世界の主要文明を収斂させることにより「21世紀文明の発信基地」となるのです。

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日本総合戦略研究所(近藤総合研究所) 近藤 章人 1996
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