「インターネットがマスコミ・マスメディアの中心になる」
著者  21世紀文明研究所 近藤章人
http://21-civilization.com

 パソコン、インターネットが普及し始めた1996年のころ、私は「インターネットは大人のおもちゃではありません。限りない可能性を秘めた新しいメディアです。」と述べた。約10年たった今日、その判断は正しかったと誰もが認めるであろう。そして今、私は「インターネットが近い将来にあらゆるメディアの中核になります。インターネットがマスコミ・マスメディアの中心になるでしょう。」と述べている。

 そのころ私はインターネットのホームページ(現在はサイトという場合が多い)をはじめた。「日本ネットサーフィンガイド」(現在の「インターネット情報源ガイド」)など私が運営しているサイトの発展と今後の方針を例にとり、インターネットの問題点と将来性について述べることとする。問題点は多々あるが、それを克服すればメディアとして限りない可能性を秘めているのである。

 そのことは逆に、出版社、新聞社、テレビ、ラジオなどの既存のメディアやそれに関連する編集プロダクション、制作プロダクションにとっては、インターネットをいかに活用するかということが、経営上の重大課題となってくる。今後は原稿、写真、漫画、アニメ、ビデオなどの個々のコンテンツとしてではなく、マルチメディア・デジタルコンテンツとして創造されるであろう。既存のメディアがインターネットをいかに活用するべきかについても、あわせて述べてみたい。

 

1. インターネット活用のデメリット(問題点)

 

@ 玉石混交の膨大な情報

 インターネットには、玉石混交の膨大な情報があり、その中から役に立つ有益な情報を探し出すためには検索の技能が必要である。以前に放送関係の専門家が集まるイベントで、女性アナウンサー出身のある有名な評論家が「インターネットにはろくな情報しかない。情報の信頼性もない。放送業界出身のジャーナリストとして、インターネットは使いません。」と堂々と胸をはって述べていた。

 私自身は、「インターネット情報源ガイド」という主要サイトと専門リンク集をリンクした総合リンク集を運営しているので、日本の首相官邸や官公庁、国際連合などの国際機関、主要企業、マスコミ各社、図書館、博物館、美術館、文化団体、イベント会場、さらには特徴のある個人サイトまで瞬時に行くことができ、有益な情報を収集している。私にとっては、こんな便利なものはなく、パソコンとインターネットがない時代に後戻りはできない。しかし、インターネットの初心者が、自分にとって必要な情報を探し出すのは困難かもしれない。URLをいちいち入力するのは間違いやすくたいへんだし、YAHOO!やgoogleで検索して有益な情報を探し出すのは慣れていないと難しい。

 その評論家先生は何を間違ったのか、いきなり掲示板を見てしまったらしい。書かれている内容のひどさ、書いている人の人格を問題にしていた。たしかにそのような掲示板が多いことは否定できない。私としても、正確な統計ではないが、個人サイトを含めれば9割以上のサイト、95パーセント以上のブログはどうでもいいような役にたたない情報であると思う。しかし、官公庁、企業、さらには個人サイトであっても、有益な情報源となるサイトやブログも少なからずある。要は役に立つ情報を探し出す技能を身につけることが必要なのである。

 役に立つ情報を探し出す技能として、一般的にはYAHOO!やgoogleの検索の方法をマスターすればよいとされている。確かに基礎的な技能としては必要なのだが、それだけでは膨大な情報のごく一部しか把握できていない。検索して表示された多くのページをすべて見ることは、よほどの暇人でない限り不可能だからだ。

 情報を探し出すためにはいくつかの方法がある。YAHOO!の場合はディレクトリと検索を併用したり、ひとつの情報に対してディレクトリから複数のたどり方をしたりした方が目的の情報を探し出しやすい。さらに複数の検索サイトを同時に検索する、専門分野の検索サイトや専門リンク集を使う、官公庁や業界団体からのリンクを使う、「オール アバウト ジャパン」のようにそれぞれの分野のガイドから情報を得るなどである。

 それらのすべての方法についてリンクしているのが「インターネット情報源ガイド」なのである。「インターネット情報源ガイド」の本質は、たんなる便利サイトの紹介ではなく、情報を探し出すための支援なのである。

 

A インターネットの危険性

 情報内容の信頼性の有無だけであれば、得られた情報が信頼できるかどうかを判断する力があればよい。現在、もっとも危険で被害が大きいのは、全体からみればごく一部なのだが、インターネットを故意に悪用する、犯罪に利用する、個人や組織があることである。コンピュータウイルスを全世界にばらまく、スパイウェアでコンピュータ内の情報を盗み出す、ファイル交換ソフトを使っているユーザーがあるウィルスに感染するとコンピュータ内の情報を全世界のネットにばら撒いてしまうなどである。防衛庁をはじめ政府機関や企業は情報管理が甘いといわざるをえない。

 オークションの詐欺、だまして会員登録をさせて登録料を払わせるサイト、入会はできても退会ができず毎月会費を払い続けなければならないサイトなど、インターネットを介しており直接相手が見えないだけに悪質なことを平気でやってしまう人がいる。スパムメール、サイトの内容とまるっきり関係のない広告メール、いやらしい言葉で男をさそう女性(実際は男性の場合が多いらしい)のメールなど、相手の顔が見えず、名前もわからないネットだからやるのだろう。

 悪いことをする人々がインターネットのプロ級の知識をもち、被害にあうのがど素人なのだから、このような犯罪にたいして対策をしなさいと指導をしても、初心者や素人が専門的知識のあるネット犯罪者にたいして勝ち目がない。インターネットの健全の発展のためには、プロバイダー、レンタルサーバー会社などの専門家が対策をするしかないと私は思う。

 

2. インターネット活用のメリット

 

@ 当事者本人からの直接のメッセージが得られる

 インターネットができる前までは、個人にせよ企業にせよ、あることに関する当事者の本人のメッセージはマスコミを通してしか得られなかった。インターネットではマスコミなど第三者を通さないので、当事者本人のメッセージが量的、質的に完全なままで得られるようになった。何事においても、第三者を介することなく、当事者本人のメッセージを聞くことが、第一歩であると思う。

 

A 誰でも簡単に安価で全世界にむけて情報発信

 自分の意見や創造した作品を発表するには、マスコミに取り上げられるしか方法がなかった。意見の場合は、人が集まるところで演説したり、ビラを配ったり、デモ行進するしか方法がなかった。自分の作品を発表するにもコンテストに入選するとか、個展を開くとかするぐらいであった。いずれにせよ莫大な費用がかかり、聞いてもらったり、見てもらったりする人数は関係者やたまたまそこを通りがかった少数の人に限られた。

 ところが、インターネットでは、いつでも、どこでも、誰にでも、意見や作品を発表することができるのである。もっともインターネットは壁新聞に似たところがあり、人通りの多いところに掲示しないと注目されない。今では非常に多くのサイトやブログがあり、自分の作成、運営しているサイトやブログの閲覧者を増やすためには、検索サイトで上位に表示されるか、ポータルサイトなどのアクセスの多いサイトにリンクしてもらう必要があり、閲覧者を増やすことは容易ではない。でも、良質で有益な情報を継続的に供給していれば誰かが注目して紹介し、やがてはアクセスが増加するだろう。

 

B 双方向のコミュニケーションが可能

 新聞、本や雑誌、テレビ、ラジオなど従来のマスコミは一方通行だった。せいぜい新聞の読者は意見を投稿したり、視聴者は電話でテレビ局やラジオ局に意見を述べたり、運よく視聴者参加番組に選ばれて出演したりするぐらいであった。情報の発信者が決定的に優位であり、情報の受信者と対等の関係とは言いがたい。放送局は視聴率、新聞社や出版社は読者数により、売り上げや広告収入が決まるので、情報の発信者は受信者のことを常に意識する必要はある。しかし、人数などの統計情報によるのであり、発信者と受信者の綿密な交流ではない。

 今後、テレビはデジタル化が進み、視聴者と交流しながら番組を進行することが容易になる。インターネットは、情報の発信者と受信者が、それぞれの分野や地域や職業により網の目のように交流することが可能である。マスコミという媒体を介さないでのコミュニティにより世論の形成もされるようにもなるだろう。とんでもない方向に世論が暴走する危険性も否定できないが、逆にマスコミが恣意的に世論を形成することも難しくなるであろう。

 

 3.「インターネット情報源ガイド」などの私が制作・運営しているサイト

 

 私の制作、運営しているサイトを紹介したい。

 図表1を参照してください。

 インターネットが一般的に普及し始めた1996年からHTMLをメモ帳(エディタ)に記述してホームページをはじめ、その後、複数のサイトを統合してURLを取得した。2004年に、よりサイトの内容を的確に表すため「日本ネットサーフィンガイド」から現在の名称に変更した。

 2001年頃から「ポートレート スタジオ ファイン」を開設した。またあるアマチュア写真連盟の役員としてそのサイトをリニューアルし、運営を担当したことがある。その後、手間がかかりすぎるので辞任し、自分で撮影した写真なので「ポートレート スタジオ ファイン」に引き継いだ。

 現在では、独自のコンテンツとリンク集、またビジネス、文明、戦略などの硬いコンテンツとポートレート写真などのやわらかなコンテンツが混在することにより、全体としてのサイトのアクセスが増加している。インターネットのサイトではあるが、内容的には雑誌そのものである。

 

4. 今やマスコミ・マスメディアに成長したインターネット

 

 パソコンでも携帯でもアクセスできるインターネットは今やマスコミ・マスメディアに成長してきた。ラジオ、テレビ、新聞、雑誌という既存のメディアが飽和状態で伸び悩んでいることに対して、インターネットの利用はまだ増加傾向にある。

 

 図表2を参照してください。

 情報の検索と蓄積に優れていること、誰でもどこでも情報の収集と発信が可能なこと、デジタルカメラやデジタルビデオにより画像や映像の撮影が安価で簡単に可能となったことなどを総合的に考慮すると、インターネットはますます発展するであろう。知的創造者・研究者がインターネットを活用して情報発信すれば質の高いコンテンツが発信できる。

 インターネットによる情報の収集と発信、発信者と受信者とのコミュニケーション、その中心が知的創造者・研究者などのクリエーターであり、著作権所有者なのである。

 

5. インターネットの将来性

 

 図表3を参照してください。

 知的創造者、研究者が情報を発信するが、その発信は文字だけで発信するのではない。文章、図解(概念図)、画像(写真)、映像(ビデオ)などあらゆる表現手段が可能となった。写真家だけが写真を撮影する時代ではなく、映像カメラマンだけがビデオを撮影する時代でもない。写真もビデオも少し練習すれば誰でも撮影できるようになる。もっとも重要なことは、どのような意図で、何を撮影して、どのように表現するかということである。

 文章、図解、画像、映像などをすべてインターネットで公開することはそれほど難しいことではない。今後はおそらく多くのクリエーターが当然のこととして、文章、図解、画像、映像をインターネットで駆使するであろう。

 講演会や勉強会の会場では、パワーポイントでプレゼンテーションをし、会場外ではインターネットで概要を公開することは今でも行われている。

 もちろん映画やテレビの質の高い番組は各専門家が力を合わせたものであり、ひとりが制作したものとのレベルの差は大きい。良質な映画やテレビ番組は永遠不滅である。まとまった知識体系である単行本や雑誌、膨大で一覧性がある新聞も部数は減ってもなくなることはないだろう。

 しかし、ひとりのクリエーターや俳優・歌手が、またはプロダクションが既存のメディアではなく。インターネットでコンテンツを配信することはありうるであろう。インターネット放送局でニュースや実用番組を配信するだろう。  

 ブロードバンドがより普及すれば、大容量のファイルの通信が有線でも無線でも可能になり、画質や音質は今より各段に向上する。液晶画面に映っているものが、テレビなのかインターネットなのかは視聴者が決定するのである。はっきりしているのは、両方を同時に見ることはできないことだ。

 

6. 既存のメディアとインターネット

 

 パソコンとインターネットの普及は,社会全体に非常に大きな影響をもたらした。テレビ、ラジオ、新聞、出版など既存のメディアはどのように対応するべきであろうか。

 インターネットは大きな社会的変化をもたらしたが、メディアについては、いままで情報の受信者であった一般大衆が、情報の発信者にもなったことである。さらには情報の発信者と受信者が直接交流するようになったのである。

 そのことは、メディアにとって、質の高い情報を提供しなければ、そのメディアは見向きもされないということであり、もうひとつは一般大衆の中の代表者をメディアに登場させて味方につけることが得策であるということである。その代表的な成功例が、女性誌の読者モデルであり、NHKの「のど自慢」であり、文芸社や新風社などの提携出版社である。写真の世界でも、アマチュアとプロの差は縮まっており、たとえば「フォト コンテスト」誌に掲載されるアマチュアの写真のレベルは高い。

 それらはインターネットが普及する前から行われていたことではあるが、インターネットが発展した今日、従来にもましてマスコミに登場したいという願望は強いので、売り上げ増加、視聴率向上に効果的に思う。インターネットで話題になったことをメディアが追いかけているケースが多く、書籍でベストセラーになり、映画化もされるケースも出てきている。

 このように既存のメディアとしては、インターネット対既存のメディアとして競争するのではなく、インターネットを中心とした情報の大海の中でいかに有益な情報をマルチメディアで発信するかが、経営上の鍵になるだろう。

 

7. インターネットのサイト運営の限界

 

 では、逆にインターネットのサイトを運営している立場から、そのままでよいのか、今後ますます発展するかと考えているかといえば、私はそのようには考えていない。

 なぜならば、玉石混交のウェブサイトやブログの数が多すぎ、その中で目立つことは容易ではない。インターネットのサイトやブログだけでは社会的な評価は低い。

 インターネットは膨大であり、全体としてはメディアなのだが、どんな有名なサイトでもその中のごく一部である。提供するコンテンツに課金することは、なかなか難しい。

 ネットビジネスについても、一からはじめて成功した事例は少なく、既存の企業や店舗や農場が新たな販売チャネルとしてインターネットを活用して成功している。

 新聞、テレビ、ラジオ、出版という既存のマスコミの社会的な影響力は非常に大きい。インターネットのサイトも既存のマスコミに取り上げられとアクセスが急増する。

 インターネットのサイトやブログはしょせん電脳壁新聞、現在では比較的検索サイトの上位に表示されており、いわばインターネットの大通り面して掲示されている私のサイトでも、今後どうなるかはわからない。インターネットのサイトやブログだけでは限界があるのである。

 

8. 「インターネット情報源ガイド」の制作者、近藤章人の新たな挑戦

マルチメディア・デジタル・コンテンツの制作

 

 以上述べた結論として、図表3で示したように、マルチメディア・デジタル・コンテンツを制作して、複数のメディアに提供して、メディアミックスを図ることが効果的である。

 カメラやビデオの技術が進歩して、アマチュアでも簡単にいい作品が撮影できるようになった。制作者はことばだけで表現するのではなく、画像や映像で表現することが可能となったのである。カメラを操作するだけのカメラマンはいらない。芸術的なセンス、被写体に対する知識・教養が重要で、何を見て、どのように感じて、いかに表現するかが重要なのである。

 制作者は、文章、図表、画像、映像で表現するのである。そうすることによってこそ、マルチメディアにコンテンツを提供できるのである。

 制作者は一個人であるとしても、制作はマスコミ業界のさまざまな人々と交流しないと円滑に進まない。編集プロダクション、制作プロダクション、出版社の垣根はかなり低くなるだろう。

 私としても、マスコミは人のつながりであり、その中に入れていただきたいと願っている。